オッス!オラ吐瀉夫!
最近、地上波初放映で話題のアニメ映画「聲の形」だが、原作の漫画版を皆さんはご存知でしょうか?
漫画版「聲の形」には3種類存在している。
この漫画「聲の形」には同じ作者、同じ作名で3種類の作品が存在している。それらをまずは紹介しよう。
まずはオリジナル版。こちらは2011年に別冊少年マガジンに掲載された読切版だ。「聲の形」はこれが最初の発表作品で、これが第80回週刊少年マガジン新人漫画賞(2008年)を受賞。これを持ってデビューを果たし、作者の大今良時さんは2010年より漫画版「マルドゥック・スクランブル」の連載を別冊少年マガジンで開始。
この「マルドゥック・スクランブル」のヒットにより、別冊少年マガジンにて、大今良時さんの受賞作「聲の形」(オリジナル版)の雑誌掲載が2011年に行われることとなった。この時、読者アンケートで「進撃の巨人」を含む並み居る連載陣を抑え一位となったそうだ。
ちなみにプロデビュー前に描いた作品ということもあり、絵柄やキャラデザが若干異なるので、かなりの違いを感じることができる。
次にリメイク版。戦術のこちらは2013年に週刊少年マガジンに掲載された読切版で、その後連載された作品とほぼ同じ内容になっている。そうなった経緯として、「マルドゥック・スクランブル」連載終了後に週刊少年マガジンへの連載予定だった「聲の形」をまず読み切りとして掲載させることとなり、連載用に用意していた第一話を読み切り用に作り直すことになった。
このリメイク版「聲の形」はTwitterを中心に話題を呼び、掲載された週刊少年マガジンの部数は6万部伸びた。
これを持って、翌週には「聲の形」の連載が確定し、2013年より連載が確定した。これが連載版である。
前置きが長くなったが、このオリジナル版、及びリメイク版を僕は読んだことがなく、読む手段もなかった。
ただ、今更になって知った情報がある。
公式ファンブックにオリジナル版とリメイク版が掲載されているそうなのだ。
ちょうど発売は2年前。2016年9月16日だ。
単行本版はすでに絶版なのだろう。
値段がおかしい。
※2020年現在は重版されて値段が適正化されています
ということで早速Kindle版を購入してみた。
僕は一時期、「聲の形」が読めなかった
少し話がずれてしまうが、僕は漫画「聲の形」が大好きだが、連載当初、途中で数ヶ月読むのを断念していた経緯がある。
それは主人公である石田の少年時代の話が原因だ。
「聲の形」のヒットの要因は僕なりの考えだと、衝撃的なシナリオと共に、障害者との交流に伴う何かしらの問題の共感、そしていじめというものを加害者・被害者・傍観者の三者の葛藤を描いているからこそ、誰しもが共感できたのだと思っている。
僕が共感したのは主人公 石田だった。
僕の少年時代について
「聲の形」を知っている人が読んでいる前提で書いてしまうが、僕は小学校、中学校時代まさに石田のようなポジションで青春を送っていた。
クラスのヒエラルキーのトップで、頭は良くないが運動が出来、友達が多く、お調子者で、危険を顧みず誰よりも先にくだらない挑戦に興じたクソガキだった。
田舎の小中学校で3クラスしかない僕の母校は、もはや庭だった。
小学校1年から中学校3年まで学年生徒数100人ほどが3クラスにクラス替えするだけで、中学に上がる頃には全員同じクラスになったことがある者同士の小さなコミュニティーで僕は天下を取った気持ちになっていた。
全員が友達で、全員が味方だった。
友達同士が僕の取り合いをし、放課後の予定は毎日埋まっていた。自分のクラスの授業をサボって、隣のクラスに忍び込んではそのクラスの友達と授業を受けたりすることもあった。
勉強が得意ではないが、運動はそこそこ得意。身長は低いが球技が得意。運動会ではクラス対抗リレーで最下位から、トップにまで持ち直したりと足も速かった。
そんな僕のアイデンティティーは「面白いこと」だった。
みんなが「吐瀉夫が一番おもしろい」と言ってくれるのが快感だった。いつからか、それを達成することが僕の目的となった。
校庭で見つけた蛇を捕まえて、1階の中庭から2階の職員室のベランダに投げ入れて先生を驚かせたり、上半身裸でボディペイントを施し、校舎中を走り回ったり。
そんな少年時代、今になって思えば色んなことを過剰に表現していたことがある。
笑うにしろ、怒るにしろ。自分を大きく見せたいのだろう。感情以上に昂ぶっていたと思う。少しのイラつきでひどい言葉を吐き、相手を突き飛ばす。大して面白くもないのに手を叩いてゲラゲラと笑う。
そんな小さな、つまらないヤツだった。
少年時代のトラウマ
ただ、それが僕が「聲の形」を読むのを断念した理由ではなく。その理由は、そういった調子に乗った当時の僕が他人を傷つけた思い出にある。
当時の僕は本当に調子に乗っていた。後先考えず行動し、同級生に怪我をさせたことが何度かある。
骨折だったりとかっていう大きな怪我ではない、ドアで指を挟んだ…といったものだが、それが僕には今も頭にこびりついていて、ふとした時にそれを思い出して激しく自己嫌悪することがある。これが僕のトラウマだ。
よりによって、淡い恋心のようなものを抱いていた相手に怪我をさせてしまったからだろうか。
あの時、彼女が指を抑えてうずくまり痛がる姿、相手に怪我をさせときながら強がって、なにそんなに痛がってんだよと悪態をつく当時の自分を思い出し、抹殺したくなる。
その経験から、漫画「聲の形」のヒロインをいじめる少年時代のシーンが辛くて1.2巻で読むのを一度断念していた。
自分のトラウマをえぐり、自分と主人公を重ね、主人公 石田のように「死にたい」と繰り返し、思う。
今だったらそんなことをしないと分かりきっているからこそ、消さない過去に苛まれるのだ。
「聲の形」公式ファンブックがどうしてトラウマをえぐり起こすのか
公式ファンブックの内容は主にこうだ。
20時間超におよぶ取材で全てのファンの疑問に答える! 大今良時自身による完全解析&超ロングインタビューで解き明かされる、『聲の形』の真実とは? さらに、別マガ&週マガに掲載された読み切り版『聲の形』2作品計106Pを初収録。本編では語られなかった登場人物たちの“ここだけの話”満載の「主要キャラクター解説」、作者厳選“美麗”カラーイラストギャラリー16Pも収録。
『聲の形』の全てがわかる、ファン必読の公式完全本! 作者・大今良時自身が細部に渡り完全解説。20時間を超えるインタビューから紡ぎ出された、本邦初公開の新事実が満載!!Amazonより引用
つまり
- 「聲の形」オリジナル版
- 「聲の形」リメイク版
- キャラクター解説
- イラストギャラリー
- インタビュー
これがファンブックのコンテンツなのだが、想像してほしい。
「聲の形」少年時代でトラウマをえぐられた僕が、その少年時代をメインとしたオリジナル版、リメイク版を立て続けに読んだときの精神的負荷を。
死にたくてたまらなくなる。
もうその後のキャラクター解説やイラストギャラリー、インタビューなど目に入らず、本を閉じて、ベッドに逃げ込むしかない。
これほど僕の感情を掻きむしる作品はなかった。だからこそ「聲の形」は強く印象に残るし、あの後の二人の関係も、僕の叶わなかった初恋の代わりに実ってほしいと強く思う他ないのだ。
ダラダラと自分語りをしてしまったけど、感情の整理も兼ねての投稿を許してほしい。
とりあえず、内容はあんまりネタバレしたくなかったので書いてないけど、僕の感情抜きに「聲の形」は素晴らしい。
もし原作未読の人は読んでほしい。
劇場まで見に行ったけどアニメ版も僕は好きでした。石田の性格がちょっと柔らかくなってたのが少し気に掛かる人はいるかも。
最後に宣伝になってしまうかもしれないが、大今先生が現在執筆中の「不滅のあなたへ」ももちろん面白く、「聲の形」と並ぶほどに大好きな作品だ。
僕はグーグーのように強く生きれる男になりたいと思う。スロースターターな漫画なので、ぜひ4巻までは読んでみてほしい。きっと涙が止まらないはずだ。
それじゃあ、またどこかで。